2026.09.06
なんでもやる、というよりは
「けっきょく、何をやっている人なの?」
ときどき聞かれる。正直、自分でもうまく答えられない。名刺を渡しても「事業支援」とか「業務サポート」とか書いてあるだけで、具体的に何をしてくれるのかは伝わりづらいと思う。
ホームページをつくることもあるし、書類を整えることもある。業務の仕組みを考えることもあれば、イベントの集客を一緒に練ることもある。事務作業から事業の立ち上げまで、バラバラに見えるかもしれない。でも、自分のなかではぜんぶつながっている。
この記事では、稲咲堂が何をしているのか、自分なりに説明してみようと思う。
事務作業──データ入力と資料作成からはじまった
もともと自分は、事務作業の人間だった。
以前、あるスポーツブランドの会社で在庫管理の仕事をしていた。毎日、大量の商品データを扱い、数字を入力し、帳票をつくる。地味で、繰り返しの多い仕事だった。
入荷した商品の数を数え、データと照合し、ずれがあれば原因を探す。出荷の記録をつけ、在庫表を更新し、報告書にまとめる。ひとつひとつは小さな作業だけれど、正確さが求められる。数字がひとつでも合わないと、どこかで誰かが困ることになる。
華やかな仕事ではなかった。でも、この経験が自分のベースになっている。データの入力、資料の作成、数字の確認。こういう「誰かがやらなきゃいけないけど、できればやりたくない仕事」を、正確に、早くこなす。それが自分の最初の持ち味だった。
いまでもお客さんに喜ばれることのひとつは、作業のスピードだ。「もうできたんですか」と言われることが多い。特別な技術があるわけではなくて、単純に、この手の作業をずっとやってきたから手が早いだけだと思う。
資料をつくるのも同じだ。報告書、提案資料、一覧表。「こういうのがほしい」と言われれば、だいたいの形はすぐに頭に浮かぶ。何百回もつくってきたから、どこに何を書けば伝わるかが分かる。見栄えのいい資料をつくるのが得意なのではなくて、「伝わる資料」をつくるのが早い、という感じだと思う。
業務整理──仕組みをシンプルにする仕事
その後、東北の小売業の会社で、商品データの整理をする仕事に関わるようになった。
店舗で扱っている商品の情報と、ネットショップの商品情報がバラバラになっている。名前の表記が違ったり、価格がずれていたり、片方にしか載っていない商品があったり。こういう「散らかった状態」を、ひとつひとつ照合して、整えていく。
たとえば、店舗では「りんごジュース 720ml」と登録されている商品が、ネットショップでは「林檎ジュース(720ml)」になっている。同じ商品なのに、表記が違うだけで別の商品に見えてしまう。こういうずれが何百件とある。それをひとつずつ突き合わせて、統一していく。
地味な作業だ。でも、これを放っておくと、あとで大きな問題になる。お客さんが店舗で見た価格とネットの価格が違っていたら、信頼に関わる。だから、誰かがやらなければいけない。
この仕事を続けるうちに、気づいたことがある。散らかっているのは、データそのものの問題ではなくて、「やり方」の問題であることが多い。登録のルールが決まっていない、更新のタイミングが人によって違う、そもそも誰が何を管理しているか分からない。
ある商品の価格が店舗とネットで違っていたことがあった。調べてみると、店舗側は先月の値上げに合わせて更新していたけれど、ネットショップの担当者にはその連絡が届いていなかった。データの問題ではなく、情報の流れの問題だった。
データを直すだけでは、また散らかる。やり方そのものを整理しないと、同じことの繰り返しになる。誰が、いつ、どこを更新するのか。そのルールを決めて、流れをつくる。そうやって、自分の仕事は「作業をこなす」から「仕組みをつくる」に少しずつ変わっていった。
事業立ち上げ──相手の考えを形にする仕事
いま、東北の製造業の会社と一緒に、新しい事業の立ち上げに取り組んでいる。
その方には「こういうことをやりたい」という思いがあった。ただ、それをどう形にすればいいか、まだ見えていない状態だった。誰に届けたいのか、いくらで提供するのか、どういう流れでお客さんを迎えるのか。考えることは山ほどある。
自分がやっているのは、その方の頭のなかにあるものを、言葉にして、整理して、計画に落としていくことだ。話を聞きながら「それはつまり、こういうことですか」と確認する。「この部分は先に決めたほうがいいかもしれませんね」と順番を提案する。
最初の打ち合わせでは、やりたいことが次々に出てくる。あれもやりたい、これもできるかもしれない。その熱量はとても大事だけれど、全部を一度に形にしようとすると、どこから手をつけていいか分からなくなる。だから、まず「最初にやること」と「あとで考えること」を分ける。優先順位を決めて、ひとつずつ進められる状態にする。
料金をいくらにするか、という話もよく一緒に考える。安すぎると続かないし、高すぎるとお客さんが来ない。「このサービスにこの値段を払う人はどういう人か」を一緒に考えて、根拠のある数字に落としていく。
イベントに出店するときに「どうすればお客さんが来てくれるか」を一緒に考えたこともある。チラシの文面、当日の導線、声のかけ方。事業そのものの設計だけでなく、「実際に人が動く場面」まで一緒に考えるのが、自分のやり方だと思う。
事業のアイデアを持っている人は多い。でも、アイデアを実際に動く形にするまでのあいだには、整理しなければいけないことがたくさんある。その「あいだ」を埋めるのが、いまの自分の仕事だと思っている。
業務効率化──めんどくさがり屋だから気づけること
ひとつ、正直に書いておきたいことがある。
自分は、けっこうなめんどくさがり屋だ。
同じ作業を何度も繰り返すのが嫌いだし、無駄な手順があると気になって仕方がない。「これ、もっと楽にできるのに」と思ってしまう。
でも、この性格が仕事では役に立っている。めんどくさいと感じるということは、そこに無駄があるということだ。「なぜこの作業を毎回手でやっているのか」「この手順、ほんとうに必要なのか」。そういう疑問が、自然に湧いてくる。
お客さんの業務を見ていても、同じことを感じる場面がある。毎月同じ数字をあちこちに転記している。同じ内容のメールを何通も手打ちしている。本人はそれが当たり前になっているけれど、外から見ると「ここ、まとめられますよ」ということが少なくない。
以前、あるお客さんが毎月の報告書をつくるのに、3つの表からそれぞれ数字を拾って、別の書式に手で打ち直していた。毎回同じことをしているのに、毎回手作業だった。元の表のつくり方を少し変えるだけで、転記の手間がほとんどなくなった。作業が楽になったのはもちろんだけれど、それ以上に「転記ミスがなくなった」ことのほうが大きかったと思う。
めんどくさい作業を減らすのが得意なのは、自分がめんどくさがり屋だからだと思う。楽をしたいという気持ちが、仕組みを考える原動力になっている。怠けたいわけではない。同じ時間を使うなら、もっと意味のあることに使いたい。ただ、それだけだ。
バラバラに見えて、つながっている
データ入力、資料作成、商品データの照合、業務の仕組みづくり、事業の立ち上げ支援、ホームページ制作。
並べてみると、たしかにバラバラだ。「何でも屋」と言われても仕方がないかもしれない。
でも、自分のなかでは全部つながっている。どの仕事も、「散らかっているものを整えて、動くようにする」ということをやっている。散らかっているのがデータなら事務作業として整理するし、業務なら仕組みをつくるし、頭のなかの構想なら言葉にして事業計画に落とす。
なんでもやる、というよりは、「困っていることに気づいて、手を動かす」。それが、いちばん正直な説明かもしれない。
何を頼んでいいか分からなくても
「こういうことって頼んでいいんですか?」と聞かれることがある。
いい。だいたいのことは引き受けられると思う。
以前、「相談しづらい」をなくしたいという記事でも書いたけれど、何を頼めばいいか分からない状態のまま連絡をくれて構わない。話を聞いているうちに、「それならこうしましょうか」という形が見えてくることが多い。
実際、いまお手伝いしている方たちも、最初から「これをやってほしい」と明確だったわけではない。「なんか困ってるんだけど、何から手をつけていいか分からない」。そういう状態から始まることのほうが多い。話を聞いて、一緒に整理して、「じゃあまずここからやりましょうか」と決めていく。そうやって少しずつ進めていくうちに、気がつけば何年も一緒に仕事をしている。
大事なことを全部ひとりで抱えている個人事業主や小さな会社が、福島にはたくさんいる。書類も、業務の管理も、ホームページも、ぜんぶ自分でやっている。それ自体はすごいことだけれど、ずっとそのままでなくてもいいと思う。
めんどくさい仕事、地味な確認作業、「誰かに頼みたいけど誰に頼めばいいか分からない」仕事。そういうものを引き受けるのが、稲咲堂だ。稲咲堂ができることはこちらにもまとめている。
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