2026.09.01
「相談しづらい」をなくしたい
「実は前から気になってたんですけど、なかなか声かけづらくて……」
あるとき、そう言われたことがある。
ありがたい言葉だった。でも同時に、少し申し訳なくもなった。気になっていたのに、声をかけるまでに時間がかかった。その間、ひとりで悩んでいたのかもしれない。もっと早く声をかけやすい状態をつくれていたら、と思った。
正直に言えば、自分自身が人見知りだ。初対面の人と話すのは得意ではないし、自分から声をかけるのにもエネルギーがいる。だからこそ、「声をかけづらい」という気持ちはよく分かる。分かるからこそ、自分がされる側に回ったとき、その壁をできるだけ低くしておきたいと思っている。
この記事では、事業をやっていて「誰かに相談したいけど、なかなか踏み出せない」と感じている方に向けて、その「しづらさ」の正体と、自分なりに考えてきたことを書いてみたい。
個人事業主や小さな会社が「相談しづらい」と感じる3つの理由
これまでいろいろな方と話してきて、「相談しづらい」と感じる理由は、だいたい3つに分けられると思っている。
1. 何を頼めるのか分からない
「ホームページも作れるらしい」「書類も手伝ってくれるらしい」──そういう話は耳に入っていても、自分の困っていることがそこに当てはまるのかが分からない。
たとえば、「お店のチラシを作りたいんだけど、文章も一緒に考えてほしい」とか、「補助金の申請をしたいけど、どの補助金がいいか分からない」とか。ひとつの相談のなかに複数の要素が混ざっていて、どこに頼めばいいのか整理がつかない。
結果として、「こんなこと頼んでいいのかな」と思った時点で、声をかけるハードルが一段上がってしまう。
2. 費用がいくらかかるか不安
「相談したら、いきなり見積もりが出てくるんじゃないか」「断りづらい空気になるんじゃないか」──こういう不安は、特に初めて外部に相談する方に多い。
ホームページ制作でも、名刺やチラシのデザインでも、「相場が分からないから怖い」という声はよく聞く。ネットで調べると金額の幅が広すぎて、よけいに分からなくなる。5万円と書いてあるところもあれば、50万円と書いてあるところもある。
お金の話が見えないと、最初の一歩がどうしても重くなる。
3. こんな些細なことで頼んでいいのか分からない
「プロに頼むほどのことじゃないかも」「自分でやるべきことかも」と思ってしまう。これが、意外と多い。
実際にこれまであった相談を挙げると、こんなものがある。
- 名刺に何を書けばいいか分からない
- Googleマップにお店の情報を載せたいけど、やり方が分からない
- ホームページの文章を少しだけ直したい
- チラシのデザインは自分で作ったけど、これでいいか見てほしい
- そもそもホームページが必要なのかどうか判断できない
どれも、本人にとっては「こんなことで……」と思う内容かもしれない。でも、その「些細なこと」がずっと引っかかっていて、前に進めないでいる人は少なくない。
そして、こうした小さな引っかかりは、放っておくと少しずつ大きくなる。名刺がないから交流会で渡せない。ホームページの情報が古いまま放置されている。チラシを作りたいけど手が止まって、結局キャンペーンの時期を逃す。些細なことが、事業の動きを止めてしまうことがある。
相談を「先延ばし」にすると起きること
「そのうち相談しよう」と思いながら半年、一年と経ってしまうケースは珍しくない。
以前、ホームページの月額費用について相談を受けたことがある。毎月3万円を払い続けていたけれど、その内訳も分からないまま、ずっとモヤモヤしていたという話だった。「おかしいな」と感じてから実際に相談するまで、かなりの時間が経っていた。
もし半年早く声をかけていたら、その間の18万円は別のことに使えていた。お金だけの話ではない。「なんとかしなきゃ」という気がかりを抱えたまま日々の仕事をするのは、思っている以上にエネルギーを使う。
相談しなかったこと自体が悪いわけではない。ただ、「もっと早く聞いてくれたらよかったのに」と思う場面は正直多い。だからこそ、声をかけやすい仕組みをこちらが用意しておかなければいけないと感じている。
最初の会話は、雑談からでいい
自分が相談を受けるとき、いきなり仕事の話から入ることはほとんどない。
まずは雑談から始める。最近どうですか、お忙しいですか、というくらいの話。相手がどんな状況にいるのか、何が気になっているのか、会話のなかで自然に見えてくることが多い。
たとえば「最近ちょっとバタバタしてて」という一言から、「実は新しいサービスを始めようとしていて、でも準備が追いついていない」という話が出てくることがある。雑談のなかに、相談の種が隠れている。
人見知りの自分が言うのもおかしな話だけれど、最初から構えなくていい空気をつくることが、いちばん大事だと思っている。「相談」と言うと身構えてしまうなら、「ちょっと聞いてみたいことがあるんですけど」くらいの感覚でいい。
聞いてみた結果、自分が手伝えることであれば一緒に考える。自分の範囲外であれば、そう正直に伝える。それだけのことだ。
見積もり・相談を無料にしている理由
稲咲堂では、見積もりや相談を無料にしている。
これは「安売り」のつもりではない。最初の一歩を踏み出しやすくするためだ。
費用が不安で声をかけられない人に、「まず話を聞かせてください。お金の話はその後で大丈夫です」と言えるようにしておきたかった。話してみて、合わなければそれでいい。無理に仕事にする必要はない。
実際、相談だけで終わることもある。それでいいと思っている。話を聞いて、「それなら自分でできそうですね」とお伝えすることもあるし、「こういうやり方もありますよ」と方向だけ示して終わることもある。
その人が「聞いてもらえてよかった」と思えたなら、それだけで意味がある。もし将来、何か困ったことが出てきたときに「あ、あの人に聞いてみよう」と思い出してもらえたら、それがいちばんうれしい。
「何を頼めばいいか分からない」でも大丈夫
相談というと、「困っていることを整理してから連絡しなきゃ」と思う方もいるかもしれない。でも、整理できていなくて当然だと思う。整理できていたら、そもそも悩んでいない。
「ホームページをどうにかしたいんだけど、何をすればいいか分からない」でいい。「チラシか名刺か、どっちが先か分からない」でいい。「そもそも何に困っているのか、自分でもよく分からない」でもいい。
話しているうちに、「あ、自分が気になっていたのはこれだったんだ」と整理がつくことは多い。その整理を一緒にやるのも、自分の仕事だと思っている。
人見知りだからこそ、できることがある
自分が社交的な人間だったら、こんなことは考えなかったかもしれない。
でも、人見知りだからこそ「声をかけづらい」の壁がどれくらい高いか知っている。初めての場所に電話をかけるときの緊張も、「こんなこと聞いたら変に思われるかな」という不安も、自分自身がずっと感じてきたことだ。だからこそ、その壁を低くすることに意識が向く。
些細なことでもいい。まとまっていなくてもいい。「何を頼めばいいか分からない」という相談でもいい。
気軽に声をかけられる存在でいること。それが、稲咲堂として自分がいちばん大切にしていることだと思う。
もし何か気になっていることがあれば、お問い合わせページから気軽にご連絡ください。「まだ相談するほどじゃないかも」くらいの段階で構いません。