2026.10.19
マニュアル作成のコツ──「つくる時間がない」をなくす、小さな会社の始め方
「マニュアルをつくらなきゃ、とはずっと思っている」
業務整理の相談を受けていると、この言葉はかなりの確率で出てきます。必要なのは分かっている。でも、つくる時間がない。どこまで書けばいいのかも分からない。結局、先延ばしにしたまま何ヶ月も経っている。
業務整理の記事でも少し触れましたが、マニュアルは最初から完璧なものをつくろうとすると手が止まります。今回は、もっと気楽に始められる方法を書いてみます。
マニュアルが必要になるのは、いつも突然
マニュアルがないことで困る瞬間は、たいてい予告なしにやってきます。
担当者が急に休んだ。退職が決まった。新しい人が入ってきた。そのときになって「あの作業、どうやるんだっけ」となる。属人化の記事で書いた話と同じ構造です。
余裕があるときにはつくろうと思わないし、余裕がなくなったときにはつくる暇がない。このジレンマが、マニュアルが永遠に完成しない最大の理由だと思います。
だからこそ、「つくる」という意識を変えたほうがいい。ゼロから書き上げるのではなく、日常の中で少しずつ残していく。そのほうが現実的です。
最初のマニュアルは、メモでいい
マニュアルと聞くと、きれいにレイアウトされた冊子や、画面のスクリーンショット付きの資料を想像するかもしれません。最終的にはそうなればいいですが、最初からそこを目指す必要はありません。
いちばん簡単なやり方は、作業をするときに手順をメモすること。「まずこのファイルを開く」「次にこの列に数字を入れる」「最後にこのボタンを押す」。箇条書きで、5行か10行。それだけで立派なマニュアルの原型になります。
実際に自分が業務整理の仕事でマニュアルをつくるときも、最初は担当者の横に座って、やっていることをメモするところから始めます。「次に何をしますか?」「ここはなぜこうするんですか?」と聞きながら、手順を書き出していく。一回の作業を見せてもらうだけで、だいたいの流れはメモできる。
大事なのは、やりながら記録すること。後から思い出して書こうとすると、細かい手順が抜ける。「いまやっていることを、そのまま書く」。これが、マニュアルをつくるいちばんの近道です。
全部の業務をマニュアル化しなくていい
「うちの業務、全部マニュアル化しようとしたら膨大な量になる」。それはその通りです。だから、全部やろうとしなくていい。
まず手をつけるべきは、「その人がいないと止まる仕事」です。月次の締め作業、特定の取引先への対応手順、経理の処理。こういう、頻度が高くて、代わりの人がいないもの。ここだけでもメモが残っていれば、いざというときに助かります。
逆に、めったにやらない作業や、やり方がしょっちゅう変わる作業は、後回しで構いません。マニュアルをつくっても更新が追いつかなくなるので、コストに見合わない。
優先順位は、「止まったら困る度合い」で決める。全部を網羅しようとせず、まず3つか5つ、いちばん大事なものから始める。
「分かっている人」が書くのがいちばんいい、とは限らない
マニュアルは業務を熟知している人が書くべき、と思いがちですが、実はそうでもありません。
その仕事に慣れすぎている人は、手順の一部を「当たり前」だと思って飛ばしてしまう。「ファイルを開いて、処理して、保存する」と書いても、初めての人には「どのファイル? どこから開く? 処理って具体的に何?」が分からない。
だから、「知らない人」がつくるほうがいいマニュアルになることがあります。知らない人が担当者に教わりながらメモを取る。引っかかったところは「ここ、もう少し詳しく教えてもらえますか」と聞く。その「引っかかり」こそが、マニュアルに書くべきポイントです。
新しい人が入ったタイミングは、マニュアルをつくる絶好の機会でもあります。教える過程でメモを残してもらえば、それがそのままマニュアルになる。
つくったら、一度使ってみる
メモができたら、一度そのメモだけを見て別の人にやってもらうのがおすすめです。
「ここが分からなかった」「この手順の次に何をすればいいか迷った」。そういうフィードバックが出たら、そこを書き足す。一回で完成させようとするより、使いながら育てていくほうが、結果的に使えるマニュアルになります。
完璧を求めると一生完成しない。70点くらいのものを早くつくって、使いながら直す。これが小さな会社に合ったやり方だと思います。
自分でつくるのが難しければ
ここまで読んで「それでもつくる余裕がない」と感じた方もいるかもしれません。
そういう場合は、外の人に手伝ってもらうのも手です。稲咲堂の業務整理では、担当者にヒアリングしながら手順を書き起こす作業もやっています。事務・バックオフィス支援の中で、日々の業務を手伝いながら自然とマニュアルが残っていく、というケースもある。
「マニュアルをつくりたいけど手が回らない」。その一言で相談してもらえれば、一緒にやり方を考えます。