2026.10.21
バックオフィスの属人化、どう解消する?──「あの人に聞かないと分からない」をなくす方法
経理の処理方法は経理担当しか知らない。取引先ごとの対応ルールは、長年やっている人の頭の中にしかない。総務の手続きも、聞かないと分からない。
属人化がなぜ起きるかは以前の記事で書きました。今回は、バックオフィスに絞って、属人化をどう解消していくかを具体的に考えてみます。
バックオフィスが属人化しやすい理由
バックオフィスの仕事は、属人化しやすい条件がそろっています。
まず、少人数で回していること。中小企業では、経理も総務も庶務も一人か二人で担当していることが多い。担当が一人しかいなければ、その人にしか分からない状態になるのは自然なことです。
次に、業務の種類が多いこと。バックオフィスは「なんでも屋」になりがちで、細かい作業が無数にある。全部をマニュアル化しようとしたら膨大な量になる。だから「聞いたほうが早い」となり、結果として特定の人に知識が集中する。
そして、忙しくて引き継ぎの余裕がないこと。日々の業務をこなすだけで手一杯で、「誰かに教える時間」が取れない。一人で事務を回しているならなおさらです。
属人化のリスクは、突然やってくる
属人化の怖さは、普段は見えないところにあります。担当者がいる間は問題なく回る。でも、その人が休んだり、辞めたりした瞬間に業務が止まる。
「あの人に聞けば分かる」は、裏を返せば「あの人がいないと分からない」ということ。急な体調不良、家庭の事情、転職。予告なしにやってきます。
もう一つのリスクは、ミスが発見されにくいこと。一人しか内容を理解していない業務は、チェックが効きません。間違いがあっても気づく人がいない。長期間にわたってミスが蓄積されてから発覚する、というケースもあります。
そして、担当者本人の負担。「自分しかできない」という状態は、その人にとってもつらい。休みにくい、相談できない、ずっと抱え続けるしかない。
解消の第一歩は「見える化」
属人化を解消するというと、「マニュアルをつくらなきゃ」と思いがちですが、いきなりマニュアルに取りかかる必要はありません。
最初にやるべきは、「何を・誰が・どうやっているか」を書き出すこと。業務の見える化です。
業務整理の記事でも紹介しましたが、やり方はシンプルです。担当者に「今やっている仕事を全部教えてください」と聞く。それをリストにする。頻度(毎日・毎週・毎月)と、かかっている時間の目安も添える。
これだけで、「この人がいなくなったら、何が止まるか」が明確になります。リスクの高いものから順に手を打てばいい。
全部をマニュアル化しなくていい
見える化ができたら、次は手順の共有です。ただし、全部をきっちりマニュアル化する必要はありません。
マニュアル作成の記事で書いた通り、最初はメモでいい。「この作業は、このファイルを開いて、ここに入力して、ここを確認する」。箇条書きで5行か10行。それを共有フォルダに置いておくだけで、いざというときの助けになります。
優先すべきは、「止まったら影響が大きい業務」と「頻度が高い業務」。この二つに絞って、まずメモを残す。完璧は目指さない。
外の人を「もう一人の知っている人」にする
属人化の解消には、「その業務を知っている人を増やす」ことが本質です。社内に増やせるなら社内で。難しければ、外の人でもいい。
稲咲堂の事務・バックオフィス支援では、業務を手伝いながら手順を把握していくことをしています。つまり、外部の人間がもう一人の「知っている人」になる。担当者が不在のときのバックアップにもなるし、手順を一緒に整理していく過程で、自然とマニュアルのもとができあがる。
業務整理として、属人化している業務の洗い出しと手順の書き起こしだけを依頼するケースもあります。
一気にやらなくていい
バックオフィスの属人化は、長い時間をかけてできあがったものです。一気に解消しようとしても無理がある。
まずは一つ。「自分しか知らない仕事」を一つだけ選んで、誰かに伝えてみる。メモを書いて共有する。それだけで、属人化の解消は始まります。
「どこから手をつけていいか分からない」「書き出してみたけど量が多すぎる」。そんなときは相談してください。一緒に優先順位をつけるところから始めます。